昭和31年、大阪の戦い、(一念)。

えらいこっちゃ。ほんまに、どないしたらええやろう。

戦いは、戦ってみなければわからないものだよ。
僕にとっても初陣だ。征ちゃんにとっても初陣だ。戸田先生がやれとおっしゃった、それだけで充分じゃないか。

充分すぎて、僕にはどないしたらええものか、わからへん。

さすがの剛球投手も、選挙になると案外気が小さいね。度胸をすえて、互いに思いきりやろうじゃないか。

その度胸が、こんどばっかりは出て来まへんなあ。マウンドの上だったらなあ。どうも、それとこれとは話がえらいちがいまっせ。


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≪ナレーション≫ それでは寸劇人間革命のコーナーです。
本日は「大阪の戦い」と題しましてお送りいたします。

時は、昭和三十年・1955年10月のある夜。

山本伸一の自宅に、大阪支部長である、春木征一郎がひょっこり訪ねてきたのであります。
春木は、翌年夏の参議院選挙の候補者に内定したことを知って、あわてていたのであります。

≪春木征一郎≫ えらいこっちゃ。ほんまに、どないしたらええやろう。

≪山本伸一≫ 戦いは、戦ってみなければわからないものだよ。
僕にとっても初陣(ういじん)だ。征ちゃんにとっても初陣だ。戸田先生がやれとおっしゃった、それだけで充分じゃないか。

≪春木征一郎≫ 充分すぎて、僕にはどないしたらええものか、わからへん。

≪山本伸一≫ さすがの剛球投手も、選挙になると案外気が小さいね。度胸をすえて、互いに思いきりやろうじゃないか。

≪春木征一郎≫ その度胸が、こんどばっかりは出て来まへんなあ。マウンドの上だったらなあ。
どうも、それとこれとは話がえらいちがいまっせ。

≪ナレーション≫ 春木は、広宣流布の戦いのなかで、もし捨石が必要であれば、喜んで捨石に殉(じゅん)じようと心に決めていた。
しかし、山本伸一の胸中には断じて勝つとの決意が、火のごとく燃えつつあったのであります。

≪山本伸一≫ 第一に、戸田先生の構想の一つを挫折(ざせつ)させることになる。

第二に、自身の広宣流布の本格的な初陣に敗れることになる。それは、使命ある生涯の蹉跌(さてつ)に通じてしまう。

いかにしても勝たねばならない。
そして未来のこうした戦いが勝利に通ずる道を、開くことができる。
所詮(しょせん)、勝利する以外に途(みち)はない。

御書をひもとけば、不可能を可能にすることも、戦いの要諦(ようてい)は必ずしも数にあるのではなく、少数でも固い団結にあることも、信心の無量であることも明確にして鋭(するど)く教えているではないか。

日蓮大聖人の仏法が真実であるならば、末法今時(こんじ)の一信徒(いちしんと)の自分自身にも、それが証明できないはずがない。
「なにの兵法よりも法華経の兵法をもちい給うべし」とあるではないか。

≪ナレーション≫ 彼は、どんな辛労(しんろう)を重ねても、どれほどの苦難に遭遇(そうぐう)しても、堪(た)え忍(しの)び、目的を完遂(かんすい)しようと固く一念に決めた。
彼は、すでにたった一人であったが、立ち上がったのである。

≪ナレーション≫ 昭和31年・1956年1月5日。関西本部三階の仏間で、地区部長会が開かれています。

山本伸一は語(かた)った。

大阪地方区当選ラインは、二十数万票。しかし大阪府の学会員は三万世帯、それも入会1年2年の人が大半です。

幹部一同、みるみる失望の色をうかべた。
「これでは戦いにならない。勝利はとても不可能だ。」と、彼らは直感した。

この瞬間に、山本伸一の熾烈(しれつ)な戦いが開始されたのであります。

≪山本伸一≫ 誰びとも、これではまったく勝利は不可能と思うでしょう。今皆さんもそう考えておられる。

しかし、私どもは、立派な御本尊をいただいている。
世間の人びとの常識では、とうてい不可能と思い込んでいることを可能にする力が、御本尊にはあるのです。

ただあきらめて、不可能と思っている人は、妙法の力を知らない人たちです。すべてを可能にする人は、その妙法の力を引き出すことのできる人です。

御書には『湿(しめ)れる木より火を出(いだ)し、乾(かわ)ける土より水を儲(もう)けんが如く強盛に申すなり』とあります。

これは、大聖人様が佐渡から、四条金吾に宛(あ)てられたお手紙の一節です。
ひどい乱世で、佐渡におられる大聖人は、鎌倉で弾圧にあっていた弟子たちをどうしようにも、守ることはできない。とても不可能なことです。

しかし、大聖人の御祈念は――しっぽりと濡(ぬ)れた木をこすってでもなお火を出させてみせる。
また、カラカラに乾いている砂漠(さばく)のような大地から水を迸(ほとぼし)り出(だ)させてみせる。

御本尊に対する祈りというものは、一大事の時には、このようなものでなければならぬと、お示しになっているのです。

いま、私たちの置かれた立場や、合理的な考え方に慣れてしまった頭脳では、今回の戦いの勝利はとても、不可能と思うでしょう。
しかし無量の力を、御本尊は秘めていることを、大聖人は明確に教えていらっしゃる。

これを信じるか、信じないか、それは、私たちの問題です。

絶対に幸福になれないとあきらめていた人が、この信仰に徹(てっ)して励(はげ)んでいるうちに、いつの間にか、なに不自由ない幸福な境涯になっている驚くべき事実を、私たちは、たくさん知っています。

私たちは不可能を可能にする生活を、実現しているではありませんか。
これを妙法といい信心という―ここを知ってください。

全員の祈りが揃(そろ)って御本尊に向かったとき、不可能を可能にする途(みち)が豁然(かつぜん)と開けるのは当然なのです。

信心のこの原点を皆さん一人一人に教えないで、もし、戦いに敗れたとしたら、私は関西の皆さんがたが可哀想(かわいそう)でなりません。

私は御本尊様にしっかりお願いした。
どうあれ勝たせてくださいと、心から祈りました。

私は皆さんを心から尊敬し、信頼しております。
生意気(なまいき)に響くかもしれませんが、私は関西の人たちが大好きですし、可愛(かわい)い。
それがもしも敗れることにでもなったら、関西の純信な友たちの悲嘆(ひたん)を思うと、私は胸の裂(さ)けるような思いにかられます。

必ず勝ってみせる。私の決意は変わりません。
ただただ、皆さんがたのために勝ちます。

≪ナレーション≫ 山本伸一の切々とした話は、並み居る人々の胸に惻々(そくそく)と迫(せま)った。

山本伸一の億劫(おくごう)に辛労(しんろう)を尽(つ)くした祈りある一念は、この夜、関西の幹部の一念を一変させるに充分だったのであります。

≪山本伸一≫ まず、全関西の強盛な祈りから始めるわけですが、これが勝利への、第一のポイントです。第二のポイントは、最高の作戦、最高の行動です。
これがなければ勝機(しょうき)をつかむことは絶対にできない。

この二つのポイントが調和したとき、不可能も可能となり、勝利を得ることができると確信いたします。
この調和をさせるものは何かというと、それが信心なのです。

ですから信心が根本であると申し上げるのも、そのためです。わかりますか。

御書には『何の兵法よりも法華経の兵法をもちい給うべし』とあります。
これは、どんな作戦、行動よりも、法華経の兵法、つまり信心から出た作戦、行動を用いる以外にないのだ、それが最高の作戦であり、最高の行動となるということです。

皆さんは安心して戦ってください。
戸田会長に代わって、このたびの関西の戦いの指揮は、私がとらせてもらいます!

≪ナレーション≫ ここで山本伸一は、突然「黒田節」を歌おうと提案したのであります。
一同が歌い始めると、彼は歌にあわせて見事な舞いを、披露(ひろう)したのであります。

≪山本伸一≫ さあ、元気よく踊ろうじゃありませんか。関西の初陣だ。さあ誰か踊ってみませんか。

≪ナレーション≫ 嬉しくなった一人の男が踊りだした。だが、歌と踊りのテンポが合わず、仕草(しぐさ)はまことに滑稽(こっけい)をきわめ、見ていた人たちはどっと爆笑した。

≪山本伸一≫ はい、つぎの人。

≪ナレーション≫ こんどは、歌を無視して踊りばかりに気を使ったので、操(あやつ)り人形のようなギコチないデタラメ踊りになってしまった。
このあと、一人、二人と立つうちに、人々は腹の皮をよじらせて笑った。

最後に、山本伸一が再び舞いだした。
静と動の機微(きび)は見事な調和を保ち、豊かな表情を現出(げんしゅつ)したのであります。

≪山本伸一≫ このたびの戦いは、このように舞を舞って戦うのです。
そして勝利のあかつきには、また『黒田節』を舞って祝おうではありませんか。

≪ナレーション≫ この戦いが「常勝関西」の源(みなもと)でありますことは、皆様ご存知のとおりであります。

本日は、小説人間革命第十巻「一念」の章から、「大阪の戦い」と題しまして、黎明地区のオールスターキャストでお送りいたしました。

以上で寸劇人間革命のコーナーを終わります。



寸劇人間革命を最後まで読んでくださりありがとうございます。

≪山本伸一≫のセリフが、長くなってしまいました。
一人では大変ですので、二人でやったらどうでしょうか。

この寸劇人間革命の分量はおおよそ、20文字×200行です。

小説人間革命第十巻『一念』の章には、ほかにも大切なお話がたくさんあります。それらを全部省略したわけですが、「このまとめ方では?」と思われた方には、お詫びいたします。

戸田はこの作戦を、どうしても山本伸一にやらせたかった。勝利を度外視しても、広宣流布の未来への開拓の苦難の途をあえて進ませ、彼の晩年の掌中の珠である伸一の健気なる勇姿と、地涌の底力とを、彼の没後のためにたしかめておきたかったのである。彼は広宣流布の宏遠な未来の一切を山本伸一という二十八歳の青年に賭けていた。

山本伸一は、十月、十一月、十二月と慌ただしい中にあって、次々に、彼の身にかかる行事をこなしていった。しかし彼は胸中では一瞬たりとも大阪の来るべき戦いを忘れることができなかった。忘れていられないということは、深く悩みとおしていることである。誰も気づくものはなかったが、戸田にはわかってしまっていた。
伸ちゃん、人生は悩まねばならん。悩んではじめて信心もわかるんだよ。それで偉大な人になるんだ。

いきなり――法華経とは将軍学なりと、浮かんだのである。ああそうだったのか。御本尊と信心、これに一切がかかっている。どのような時代に、どのような事態に遭遇しようと、妙法の指導者たるものの資格は、法華経の兵法を将軍学にするかしないかにあるのだ。

第一に大胆たれ、第二に大胆たれ、大三に大胆たれ。事に処する先哲の箴言である。この決意と実践は、また妙法の究極とするところではないか。


印刷用に空白行の少ないテキストデータを準備しました。是非、ご活用ください。

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昭和31年5月・大阪の戦い

あんた、なんでそうお経ばっかりあげはるのや、なんかええことでも、おますのかいな?

ええこと、おますとも。だれでもみんな倖(しあわ)せになれる信心は、世界中でこれしかおまへんのや。

そりゃ、ほんまかいな?

あなたがたは、法律に触れたというので悪人とされた。しかし、法律にふれて悪人にならなければならぬ、その運命は、先祖代々からの誤った宗教が深く根本的に、あなたの生命を毒しておると言いたいのだ。だから憎(にく)むべきは、間違った宗教であり、決して今のあなたがたではない。



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≪ナレーションA≫ それでは寸劇人間革命のコーナーです。

本日は、『昭和31年5月・大阪の戦い』と題しましてお送りいたします。

≪ナレーションB≫ 山本伸一は、関西本部において朝の勤行・御書講義を終えると、暇(いとま)ある限り各拠点を回り激励をつづけた。

夜は各所の座談会に顔を出した。
まるで神出鬼没(しんしゅつきぼつ)といったように、瞬時をおしんでの激闘が始まったのであります。

≪山本伸一≫ 〔関西弁のアクセントで〕 こんばんは、ご苦労さん。

では、まずこのなかでまだ信心をなさっていないかたは手をあげてください。

≪ナレーションB≫ 三十人前後の手があがった。
山本伸一は、新来の人びとに胸を張って言った。

≪山本伸一≫ 今夜の会合を契機(けいき)として、皆さんも絶対に幸せになっていただきたい。
幸せには、勇気が必要です。

≪ナレーションB≫ 友人との質疑がつぎつぎとつづくうちに、友人は一人また一人と入信を希望し、ほとんどの人たちの入信は決定した。
山本伸一の行くところ、弘教拡大の渦(うず)が巻きおこったのであります。


≪ナレーションA≫ そんな5月15日の早朝、事件は起こった。

男子部・代田不二也(しろたふじや)ら、数名の幹部が、警察に不当に逮捕されたのであります。
そして,その日の夕刊には、待ってましたとばかりに、学会の誹謗(ひぼう)記事が、デカデカと、載(の)ったのであります。

翌朝の早朝勤行のあと、山本伸一は言った。

≪山本伸一≫ まず昨日の夜の報告を聞きましょう。座談会はどんな空気だった?
上田君から聞こうか

≪上田藤次郎≫ みんな元気でしたが、昨夜は早く解散しました。
事件のことを特に質問するものもなく終わりました。質問がなかったことは、内心かなり怯(おび)えている節(ふし)もあるように見受けられました。

質問があれば、今度の事件について徹底して話そうと思ったのですが、……

≪山本伸一≫ 〔大きい声できびしく〕怯(おび)えているのは、君ではないのかね!

≪ナレーションA≫ 怯えているのは、必ずしも一般の会員ではない。幹部たるものの君たちの心ではないか。との指摘は、深く彼らの胸の奥につき刺さった。

≪山本伸一≫ 今こそ、私たちの信心の何たるかを思い起こしていただきたい。
法華経を持(たも)つ私たちは、このたびの難を当然のこととして心得なければならないのです。

しかし、凡夫の拙(つたな)さで、大なり小なり影響を受けずには済みません。
電光石火、これにどう対処して戦っていくかが、現在の最大の課題です。

どこまでも金剛不壊(こんごうふえ)の信心にこそ解決の指針を求めなければなりません。

御書には『何の兵法よりも法華経の兵法をもちい給うべし……ふかく信心をとり給へ、あへて臆病にては叶うべからず候』とあります。

どこまでも信心を強くしていくならば、どんな怨敵(おんてき)もことごとく滅びてしまう。
それには私たちの信心のなんたるかに、さらに深く思いを、いたさなければならない。
どうあってもまず絶対に臆病であってはならないとの仰(おお)せです。

正しい仏法が、正しい信仰が最後に必ず勝たないわけがない。
世間や新聞がなんと中傷しようと、それに紛動されては、せっかく信心してきた多くの会員が、幸せになれるのをむざむざ棄(す)てることになります。

それを思うと、どうあっても一人の落伍者(らくごしゃ)もなく、最後まで信心を貫き通すように、皆さんそろってよく指導してください。

いま留置(りゅうち)されている同志も懸命に戦っているにちがいない。私には、それがよく分かるのです。


≪ナレーションB≫ さて、取調べの終わった代田は、薄暗い地下の留置場に入れられた。
数人の留置人の目が異様に光って、彼をじろじろと見た。
しかし、彼は下腹に力をこめ、力強い声で朗々と勤行を始めた。

留置場の看守(かんしゅ)が、とんできて、やめさせようとしたが、彼の大きな声は、全留置場にひびきわたったのであります。

≪牢名主、(バクチの常習犯)≫ あんた、なんでそうお経ばっかりあげはるのや、なんかええことでも、おますのかいな?

≪代田不二也≫ ええこと、おますとも。だれでもみんな倖(しあわ)せになれる信心は、世界中でこれしかおまへんのや。

≪牢名主≫ そりゃ、ほんまかいな?

≪代田不二也≫ あなたがたは、法律に触れたというので悪人とされた。
しかし、法律にふれて悪人にならなければならぬ、その運命は、先祖代々からの誤った宗教が深く根本的に、あなたの生命を毒しておると言いたいのだ。

だから憎(にく)むべきは、間違った宗教であり、決して今のあなたがたではない。

≪ナレーションB≫ はじめて耳にする、意外な話である。

時間に制限のない牢獄の座談会は、退屈まぎれに延々と続けられたのであります。

≪牢名主≫ うまい話やけど、それにはどないしたらええのや?

≪代田不二也≫ 御本尊にむかって朝晩勤行するだけのことですわ。それが基本ですよ。

≪牢名主≫ ほう、それだけでっか。

……しかし信心したとなると、酒は飲んだらあかん、遊んだらあかん、ということに、なるんと、ちがうんか?

≪代田不二也≫ そんなことはない。間違った邪(よこしま)な宗教を棄(す)てて、絶対に正しい宗教につくことです。ここがいちばん大事なことです。

そうすれば、これまでのいやな人生がめきめき変わって、愉(たの)しい人生になっていくんですわ。
酒が好きなら、愉しいうまい酒が飲める。遊ぶのがよかったら、心から愉しめる遊びをすればよい。

だいいち、日蓮大聖人様は、お酒がお好きな方だったらしい。

≪牢名主≫ ほう、日蓮さんもお酒が好きか。わしらの仲間やな。

〔あらたまって〕わしみたいなもんでも、信心できまっか?

≪代田不二也≫ できるどころじゃない。だれだって、大聖人様からみれば、みんなおなじ仏の子ですわ。

≪牢名主≫ そうでっか。そんなら安心ですわ。

ひとつ、やらせてもらいまひょ。よろしゅう頼んまっせ。

≪ナレーションB≫ さらに、もう一人が入信を希望し、留置場における勤行は、三人の声となって、ひびきわたったのであります。

看守たちは「代田という男は、手のつけられん奴じゃ、二人も信者をふやしおった」と口惜(くや)しがったのであります。


≪ナレーションA≫ 数日たって、代田たちが無事釈放されたころになると、かつてないもりあがりが各地の座談会であふれた。逮捕事件は逆に組織の団結を固めたのであります。

歓喜のあまり各拠点から関西本部に報告に駆(か)け込む幹部たちで、本部は夜になるとあふれた。

狭い廊下や階段は、これらの人たちが慌(あわ)ただしく行きかい、笑顔と笑顔がかちあった。
三階の仏間からは力強い唱題が絶えない。

関西本部の建物が、まるで激戦中の戦艦のように、ゆれたのであります。


≪ナレーションB≫ 5月31日、東京豊島公会堂で5月度の本部幹部会が開催された。

≪統監責任者≫ 成果発表。第一位、大阪支部。一万一千百十一世帯!!

≪ナレーションB≫ 人びとはここで一瞬、耳を疑うように耳を欹(そばだ)てた。
やがて高潮(たかしお)のような拍手に移った。

感嘆(かんたん)と羨望(せんぼう)と吐息(といき)の中に、拍手はしばし、鳴りやまなかったのであります。

≪ナレーションA≫ 本日は小説人間革命第十巻「険路(けんろ)」の章より、『昭和31年5月・大阪の戦い』と題しまして、黎明地区のオールスターキャストでお送りいたしました。

以上で寸劇人間革命のコーナーを終わります。


この寸劇人間革命を、最後まで読んでくださって、ありがとうございます。

1) 山本伸一参加の座談会の状況
2) 早朝勤行の終わった後の指導
3) 留置場での折伏
4) 関西の盛り上がりの状況
5) 本部幹部会の成果発表

という感じで、5つのお話が進みます。分かりやすくするため、一つのお話ごとにナレーションABが交代します。
AB両方を一人で読んでも寸劇はできます。

≪統監責任者≫のところはナレーションの方が読んでも大丈夫です。

この寸劇人間革命の分量は、おおよそ、20文字×190行です。
印刷用に空白行の少ないテキストデータを準備しましたので、ご活用ください。


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大阪の戦い_一念


この初陣の一戦を本源として、未来のこうした戦いが勝利に通ずる道を、開くことができる。
所詮、勝利する以外に途はない。

どうか、一人ひとりに直接会って、よく話を聞いてあげ、今の悩み深い境涯から、信心によって必ず脱出できることを、真心込めて懇切に話してあげてください。

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≪ナレーションA≫ 時は、昭和31年、1956年1月5日。
山本伸一は、関西本部において、個人面接の指導に終始した。このたびの戦いに一人の落伍者(らくごしゃ)もないことを願いながら、全魂(ぜんこん)をこめて激励し、心血を注いでいたのであります。
その戦いとは。そうです。あの伝説の戦い・大阪の戦いであります。

≪ナレーションB≫ 戸田はこの作戦を、どうしても山本伸一にやらせたかった。
広宣流布の未来への開拓の苦難の途をあえて進ませ、彼の晩年の掌中(しょうちゅう)の珠(たま)である伸一の健気なる勇姿と、地涌の底力とを、彼の没後(ぼつご)のために、たしかめておきたかったのであります。

≪ナレーションA≫ 山本伸一の胸中には断じて勝つとの決意が、火のごとく燃えつつあったのであります。

≪山本伸一_1≫ 第一に、戸田先生の構想の一つを挫折(ざせつ)させることになる。
第二に、自身の広宣流布の本格的な初陣に敗れることになる。それは、使命ある生涯の蹉跌(さてつ)に通じてしまう。この初陣の一戦を本源として、未来のこうした戦いが勝利に通ずる道を、開くことができる。
所詮(しょせん)、勝利する以外に途(みち)はない。

御書をひもとけば、不可能を可能にすることも、戦いの要諦(ようてい)は必ずしも数にあるのではなく、少数でも固い団結にあることも、信心の無量であることも明確にして鋭(するど)く教えているではないか。
日蓮大聖人の仏法が真実であるならば、末法今時(こんじ)の一信徒(いちしんと)の自分自身にも、それが証明できないはずがない。「なにの兵法よりも法華経の兵法をもちい給うべし」とあるではないか。

≪ナレーションB≫ 関西本部では、地区部長会が開かれています。山本伸一は、七月の大阪地方区の初陣に勝利すること、そして極めて厳しい現状を語った。

「これでは戦いにならない。」皆がそう直感した瞬間に、山本伸一の熾烈(しれつ)な戦いが開始されたのであります。

≪山本伸一_2≫ 誰でも、これではまったく勝利は不可能と思うでしょう。しかし、私どもは、立派な御本尊をいただいている。
世間の人びとの常識では、とうてい不可能と思い込んでいることを可能にする力が、御本尊にはあるのです。

御書には『湿(しめ)れる木より火を出(いだ)し、乾(かわ)ける土より水を儲(もう)けんが如く強盛に申すなり』とあります。
ひどい乱世で、佐渡におられる大聖人は、鎌倉で弾圧にあっていた弟子たちを、どうしようにも、守ることはできない。とても不可能なことです。
しかし、大聖人の御祈念は、『しっぽりと濡(ぬ)れた木をこすってでも、なお火を出させてみせる。また、カラカラに乾いている砂漠(さばく)のような大地から、水を迸(ほとぼし)り出(だ)させてみせる。御本尊に対する祈りというものは、一大事の時には、このようなものでなければならぬ』と、お示しになっているのです。

いま、私たちは、合理的な考え方に慣れてしまって、今回の戦いの勝利はとても、不可能と思うでしょう。
しかし無量の力を、御本尊は秘めていることを、大聖人は明確に教えていらっしゃる。
これを信じるか、信じないか、それは、私たちの問題です。

全員の祈りが揃(そろ)って御本尊に向かったとき、不可能を可能にする途(みち)が豁然(かつぜん)と開けるのは当然なのです。
信心のこの原点を皆さん一人一人に教えないで、もし、戦いに敗れたとしたら、私は関西の皆さんがたが可哀想(かわいそう)でなりません。

私は御本尊様にしっかりお願いした。
どうあれ勝たせてくださいと、心から祈りました。

≪ナレーションB≫ 山本伸一の切々とした話は、並み居る人々の胸に惻々(そくそく)と迫(せま)った。

山本伸一の億劫(おくごう)に辛労(しんろう)を尽(つ)くした祈りある一念は、この夜、関西の幹部の一念を一変させるに充分だったのであります。

≪山本伸一_3≫ どうか、一人ひとりに直接会って、よく話を聞いてあげ、今の悩み深い境涯から、信心によって必ず脱出できることを、真心込めて懇切(こんせつ)に話してあげてください。

私は皆さんを心から尊敬し、信頼しております。生意気(なまいき)に響くかもしれませんが、私は関西の人たちが大好きですし、可愛(かわい)い。
それがもしも敗れることにでもなったら、関西の純信な友たちの悲嘆(ひたん)を思うと、私は胸の裂(さ)けるような思いにかられます。
必ず勝ってみせる。私の決意は変わりません。
皆さんは安心して戦ってください。

戸田会長に代わって、このたびの関西の戦いの指揮は、私がとらせてもらいます!

≪ナレーションA≫ ここで山本伸一は、突然『黒田節』を歌おうと提案したのであります。
一同が歌い始めると、彼は歌にあわせて見事な舞いを、披露(ひろう)したのであります。

≪山本伸一_4≫ さあ、元気よく踊ろうじゃありませんか。関西の初陣だ。さあ誰か踊ってみませんか。

≪ナレーションA≫ 嬉しくなった一人の男が踊りだした。だが、歌と踊りのテンポが合わず、仕草(しぐさ)はまことに滑稽(こっけい)をきわめ、見ていた人たちはどっと爆笑した。

≪ナレーションA≫ 最後に、山本伸一が再び舞いだした。
静と動の機微(きび)は見事な調和を保ち、豊かな表情を現出(げんしゅつ)したのであります。

≪山本伸一_4≫ このたびの戦いは、このように舞を舞って戦うのです。そして勝利のあかつきには、また『黒田節』を舞って祝おうではありませんか。

≪ナレーションB≫ 本日は、小説人間革命第十巻「一念」の章から、「大阪の戦い・一念」のお話を、黎明地区のオールスターキャストでお送りいたしました。

以上で寸劇人間革命のコーナーを終わります。




最後まで読んでくださってありがとうございます。
この寸劇人間革命の分量は、おおよそ、20文字×135行です。


この寸劇人間革命は以前に掲載したものを作りなおしたものです。
エピソードを省略し、構成もいじりました。
その寸劇人間革命を読んでみたい方は、ここをクリック してください

原稿印刷用に空白行の少ないテキストデータを準備しました。楽しく、有意義な座談会のために、ぜひ御活用ください。

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男子部部隊参謀・代田不二也さんのお話


人生は劇場の舞台みたいなものだ。
みんな登場人物となって一生懸命に劇を演ずるしかない。
人生は劇だからです。
君も広宣流布の登場人物となったからには、努力を積んで名優になることだ。
君は必ずなれる。私といっしょに戦おうじゃないか。


世紀の丈夫たれ
東洋の健児たれ
世界の若人たれ
君よ 一生を劇の如く

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≪ナレーション≫ 時は昭和31年、1956年3月。ここは関西本部。ある日の午後、人影の少ない3階仏間で、ひとり、唱題をしている男子部。本日の主人公、代田不二也(しろたふじや)・部隊参謀であります。

≪山本伸一≫ 代田君、毎日ごくろうさま。ところで、君のアパートの押入れには、靴下が段ボール箱にいっぱいたまっているんだろうなァ。

≪代田不二也≫ えッ??参謀室長。なんでそれをご存知なんですか??

≪山本伸一≫ そりゃわかるさ。
……僕も寒々としたアパートに3年間一人で住んだことがあるもの。臭い靴下がダンボール箱いっぱいになって閉口したよ。
……そう、そう、枕がなくて新聞を丸めて寝たこともあったけ……

≪代田不二也≫ えッ??室長にもそんな時代があったんですか??

≪山本伸一≫ あるもないも、そういう厳しい時があったればこそ、今日(こんにち)の私があるんだよ。誰でもおなじだよ。すべて仏道修行なんです。

≪ナレーション≫ 代田は、引き込まれるようにしゃべりだした。誰にも話したことのない事柄が、後から後から出るのが不思議だった。
真面目に信心しているとはいえ、将来どうなるのか?
わびしい悲哀(ひあい)の数々を思いのたけ告白したといってよい。

≪山本伸一≫ 代田君、君のことはずっと前から私にはわかっていた。決して心配ない。
このまま真剣に信心をつづけさえすれば心配ありません。
多くの同志の姿からはっきりいえるのです。

≪ナレーション≫ 代田は無言のまま、大きくうなずいて、伸一をみつめたのです。

≪山本伸一≫ 『世界を制覇(せいは)せんとするものは、汝(なんじ)自身の悲哀を制覇せよ』という言葉がある。
それができるのが、この信心の修行だよ。
これは間違いない。
わたしもかつては、今の君よりも自分自身を情けなく思ったこともある。
君も、私とまったく同じなんだ。

本当の仏道修行は、親元を離れた厳しさのなかにあるんだ。いま、君はその最中だ。将来は誰が保障しなくとも、御本尊様は保障してくださっている。
いまの戦いのすべてが、仏道修行なんです。
頑張ろうじゃないか。

代田君。わかってみれば、人生は劇場の舞台みたいなものだ。みんな登場人物となって一生懸命に劇を演ずるしかない。人生は劇だからです。
君も広宣流布の登場人物となったからには、努力を積んで名優になることだ。
君は必ずなれる。私といっしょに戦おうじゃないか。

≪代田不二也≫ はい。ぜひ、お願いいたします。
(独り言)そうか、いま、俺は劇を演じているのか。
へたくそな、ダイコン役者だなァ。
よし。どうせやるなら、おもいっきりやってやろう。

≪山本伸一≫ 代田君、今日は君とゆっくり話ができてよかった。記念に一詩(いっし)を贈ろう。受け取ってくれたまえ。

≪ナレーション≫ 山本伸一は激励の詩を、便箋(びんせん)にさらさらと書き認(したた)め、代田に手渡したのであります。


≪代田不二也≫ (詩を朗読する)

世紀の丈夫(ますらお)たれ
東洋の健児たれ
世界の若人たれ
君よ 一生を劇の如(ごと)く

≪ナレーション≫ この一詩は、代田不二也の胸に、たちまち灼(や)きついたのであります。

本日は、小説人間革命第10巻・「険路」の章より、「男子部部隊参謀・代田不二也さんのお話」を、黎明地区の、オールスターキャストで、お送りいたしました。

以上で、寸劇人間革命のコーナーを終わります。



この寸劇人間革命を最後まで読んでくださって、ありがとうございます。
このお話は、あの伝説の戦い・「大阪の戦い」の中の、一つのエピソードであります。
以前に、今回の主人公・代田不二也さんの登場する寸劇を掲載しました。
その寸劇人間革命を読んでみたい方は、ここをクリック してください


この寸劇人間革命の分量は、おおよそ、20文字×85行です。
原稿印刷用に、空白行の少ないテキストデータを準備しました。楽しく、有意義な座談会に、ぜひご活用ください。 

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テーマ: 二次創作 | ジャンル: 小説・文学

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