昭和31年5月・大阪の戦い

あんた、なんでそうお経ばっかりあげはるのや、なんかええことでも、おますのかいな?

ええこと、おますとも。だれでもみんな倖(しあわ)せになれる信心は、世界中でこれしかおまへんのや。

そりゃ、ほんまかいな?

あなたがたは、法律に触れたというので悪人とされた。しかし、法律にふれて悪人にならなければならぬ、その運命は、先祖代々からの誤った宗教が深く根本的に、あなたの生命を毒しておると言いたいのだ。だから憎(にく)むべきは、間違った宗教であり、決して今のあなたがたではない。



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≪ナレーションA≫ それでは寸劇人間革命のコーナーです。

本日は、『昭和31年5月・大阪の戦い』と題しましてお送りいたします。

≪ナレーションB≫ 山本伸一は、関西本部において朝の勤行・御書講義を終えると、暇(いとま)ある限り各拠点を回り激励をつづけた。

夜は各所の座談会に顔を出した。
まるで神出鬼没(しんしゅつきぼつ)といったように、瞬時をおしんでの激闘が始まったのであります。

≪山本伸一≫ 〔関西弁のアクセントで〕 こんばんは、ご苦労さん。

では、まずこのなかでまだ信心をなさっていないかたは手をあげてください。

≪ナレーションB≫ 三十人前後の手があがった。
山本伸一は、新来の人びとに胸を張って言った。

≪山本伸一≫ 今夜の会合を契機(けいき)として、皆さんも絶対に幸せになっていただきたい。
幸せには、勇気が必要です。

≪ナレーションB≫ 友人との質疑がつぎつぎとつづくうちに、友人は一人また一人と入信を希望し、ほとんどの人たちの入信は決定した。
山本伸一の行くところ、弘教拡大の渦(うず)が巻きおこったのであります。


≪ナレーションA≫ そんな5月15日の早朝、事件は起こった。

男子部・代田不二也(しろたふじや)ら、数名の幹部が、警察に不当に逮捕されたのであります。
そして,その日の夕刊には、待ってましたとばかりに、学会の誹謗(ひぼう)記事が、デカデカと、載(の)ったのであります。

翌朝の早朝勤行のあと、山本伸一は言った。

≪山本伸一≫ まず昨日の夜の報告を聞きましょう。座談会はどんな空気だった?
上田君から聞こうか

≪上田藤次郎≫ みんな元気でしたが、昨夜は早く解散しました。
事件のことを特に質問するものもなく終わりました。質問がなかったことは、内心かなり怯(おび)えている節(ふし)もあるように見受けられました。

質問があれば、今度の事件について徹底して話そうと思ったのですが、……

≪山本伸一≫ 〔大きい声できびしく〕怯(おび)えているのは、君ではないのかね!

≪ナレーションA≫ 怯えているのは、必ずしも一般の会員ではない。幹部たるものの君たちの心ではないか。との指摘は、深く彼らの胸の奥につき刺さった。

≪山本伸一≫ 今こそ、私たちの信心の何たるかを思い起こしていただきたい。
法華経を持(たも)つ私たちは、このたびの難を当然のこととして心得なければならないのです。

しかし、凡夫の拙(つたな)さで、大なり小なり影響を受けずには済みません。
電光石火、これにどう対処して戦っていくかが、現在の最大の課題です。

どこまでも金剛不壊(こんごうふえ)の信心にこそ解決の指針を求めなければなりません。

御書には『何の兵法よりも法華経の兵法をもちい給うべし……ふかく信心をとり給へ、あへて臆病にては叶うべからず候』とあります。

どこまでも信心を強くしていくならば、どんな怨敵(おんてき)もことごとく滅びてしまう。
それには私たちの信心のなんたるかに、さらに深く思いを、いたさなければならない。
どうあってもまず絶対に臆病であってはならないとの仰(おお)せです。

正しい仏法が、正しい信仰が最後に必ず勝たないわけがない。
世間や新聞がなんと中傷しようと、それに紛動されては、せっかく信心してきた多くの会員が、幸せになれるのをむざむざ棄(す)てることになります。

それを思うと、どうあっても一人の落伍者(らくごしゃ)もなく、最後まで信心を貫き通すように、皆さんそろってよく指導してください。

いま留置(りゅうち)されている同志も懸命に戦っているにちがいない。私には、それがよく分かるのです。


≪ナレーションB≫ さて、取調べの終わった代田は、薄暗い地下の留置場に入れられた。
数人の留置人の目が異様に光って、彼をじろじろと見た。
しかし、彼は下腹に力をこめ、力強い声で朗々と勤行を始めた。

留置場の看守(かんしゅ)が、とんできて、やめさせようとしたが、彼の大きな声は、全留置場にひびきわたったのであります。

≪牢名主、(バクチの常習犯)≫ あんた、なんでそうお経ばっかりあげはるのや、なんかええことでも、おますのかいな?

≪代田不二也≫ ええこと、おますとも。だれでもみんな倖(しあわ)せになれる信心は、世界中でこれしかおまへんのや。

≪牢名主≫ そりゃ、ほんまかいな?

≪代田不二也≫ あなたがたは、法律に触れたというので悪人とされた。
しかし、法律にふれて悪人にならなければならぬ、その運命は、先祖代々からの誤った宗教が深く根本的に、あなたの生命を毒しておると言いたいのだ。

だから憎(にく)むべきは、間違った宗教であり、決して今のあなたがたではない。

≪ナレーションB≫ はじめて耳にする、意外な話である。

時間に制限のない牢獄の座談会は、退屈まぎれに延々と続けられたのであります。

≪牢名主≫ うまい話やけど、それにはどないしたらええのや?

≪代田不二也≫ 御本尊にむかって朝晩勤行するだけのことですわ。それが基本ですよ。

≪牢名主≫ ほう、それだけでっか。

……しかし信心したとなると、酒は飲んだらあかん、遊んだらあかん、ということに、なるんと、ちがうんか?

≪代田不二也≫ そんなことはない。間違った邪(よこしま)な宗教を棄(す)てて、絶対に正しい宗教につくことです。ここがいちばん大事なことです。

そうすれば、これまでのいやな人生がめきめき変わって、愉(たの)しい人生になっていくんですわ。
酒が好きなら、愉しいうまい酒が飲める。遊ぶのがよかったら、心から愉しめる遊びをすればよい。

だいいち、日蓮大聖人様は、お酒がお好きな方だったらしい。

≪牢名主≫ ほう、日蓮さんもお酒が好きか。わしらの仲間やな。

〔あらたまって〕わしみたいなもんでも、信心できまっか?

≪代田不二也≫ できるどころじゃない。だれだって、大聖人様からみれば、みんなおなじ仏の子ですわ。

≪牢名主≫ そうでっか。そんなら安心ですわ。

ひとつ、やらせてもらいまひょ。よろしゅう頼んまっせ。

≪ナレーションB≫ さらに、もう一人が入信を希望し、留置場における勤行は、三人の声となって、ひびきわたったのであります。

看守たちは「代田という男は、手のつけられん奴じゃ、二人も信者をふやしおった」と口惜(くや)しがったのであります。


≪ナレーションA≫ 数日たって、代田たちが無事釈放されたころになると、かつてないもりあがりが各地の座談会であふれた。逮捕事件は逆に組織の団結を固めたのであります。

歓喜のあまり各拠点から関西本部に報告に駆(か)け込む幹部たちで、本部は夜になるとあふれた。

狭い廊下や階段は、これらの人たちが慌(あわ)ただしく行きかい、笑顔と笑顔がかちあった。
三階の仏間からは力強い唱題が絶えない。

関西本部の建物が、まるで激戦中の戦艦のように、ゆれたのであります。


≪ナレーションB≫ 5月31日、東京豊島公会堂で5月度の本部幹部会が開催された。

≪統監責任者≫ 成果発表。第一位、大阪支部。一万一千百十一世帯!!

≪ナレーションB≫ 人びとはここで一瞬、耳を疑うように耳を欹(そばだ)てた。
やがて高潮(たかしお)のような拍手に移った。

感嘆(かんたん)と羨望(せんぼう)と吐息(といき)の中に、拍手はしばし、鳴りやまなかったのであります。

≪ナレーションA≫ 本日は小説人間革命第十巻「険路(けんろ)」の章より、『昭和31年5月・大阪の戦い』と題しまして、黎明地区のオールスターキャストでお送りいたしました。

以上で寸劇人間革命のコーナーを終わります。


この寸劇人間革命を、最後まで読んでくださって、ありがとうございます。

1) 山本伸一参加の座談会の状況
2) 早朝勤行の終わった後の指導
3) 留置場での折伏
4) 関西の盛り上がりの状況
5) 本部幹部会の成果発表

という感じで、5つのお話が進みます。分かりやすくするため、一つのお話ごとにナレーションABが交代します。
AB両方を一人で読んでも寸劇はできます。

≪統監責任者≫のところはナレーションの方が読んでも大丈夫です。

この寸劇人間革命の分量は、おおよそ、20文字×190行です。
印刷用に空白行の少ないテキストデータを準備しましたので、ご活用ください。


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