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戸田先生の最後の指導

伸一、昨日は、メキシコへ行った夢を見たよ。
待っていた、みんな待っていたよ。日蓮大聖人の仏法を求めてな。
行きたいな、世界へ。広宣流布の旅に……。
伸一、世界が相手だ。君の本当の舞台は世界だよ。
伸一、生きろ。うんと生きるんだぞ。そして、世界に征くんだ。

私は死んだら、大聖人のところへ還ってご挨拶する。
そこで、叱られるか褒められるかわからんが、七日たてばまた戻ってくる。
ともかく七日間は、私の遺骸は焼かずに、そのままにしておきなさい。
みんな、私の死相をよく見ておくのだ。
ほんとうの成仏の相とはどういうものか教えておきたいのだよ。

戦時中と同じように、宗門は、正法を滅亡させる元凶となり、天魔の住処にならないとも、限らないのだ……。
しかし……、日蓮大聖人の正法を滅ぼすようなことがあっては、断じてならない。
そのために、宗門に巣くう邪悪とは、断固、戦え。
いいか、伸一。一歩も退いてはならんぞ。
追撃の手をゆるめるな!



P1010486_2.jpg



≪ナレーション1≫ 本日の寸劇人間革命は、「戸田先生の最後の指導」と題しましてお送りいたします。

時は、昭和33年・西暦1958年3月は下旬のお話。
そうです。「広宣流布記念の日」3月16日の数日後のお話であります。

≪ナレーション2≫ ある朝のことである。
伸一が戸田城聖の寝ている理境坊(りきょうぼう)の二階へ行くと、戸田は床のなかでにこやかな表情を浮かべて話かけてきた。

≪戸田城聖≫ 伸一、昨日は、メキシコへ行った夢を見たよ。
待っていた、みんな待っていたよ。日蓮大聖人の仏法を求めてな。行きたいな、世界へ。広宣流布の旅に……。

≪山本伸一≫ 先生……

≪戸田城聖≫ 伸一、世界が相手だ。君の本当の舞台は世界だよ。
世界は広いぞ。人種も、民族も、異なる。自由主義の国も、社会主義の国もある。国によって宗教もさまざまだ。
そうした国々に、どうやって妙法を広めていくか、いまからよく考えておくことだ。
人類の幸福と平和の実現こそ仏法の本義なのだからな。

≪ナレーション2≫ 戸田はまじまじと伸一の顔を見た。そして、布団のなかから手を出した。伸一は、無言でその手を握った。

≪戸田城聖≫ 伸一、生きろ。うんと生きるんだぞ。
そして、世界に征(ゆ)くんだ。

≪ナレーション2≫ 伸一は戸田の手を握りしめ、何度も頷(うなづ)きながら唇をかみ締(し)めた。彼は師匠の温かい情愛、自己の使命の重大さが痛感されてならなかったのであります。

≪ナレーション1≫ 3月24日、戸田の体の衰弱を心配して、東京から医師を呼んだのであります。

≪木田医師≫ ご病気はすべて治っております。ただ、お体が著しく衰弱しています。
重湯でも、スープでも結構ですから、しっかりお召(め)しあがりになってください。

≪戸田城聖≫ ――どこも悪くないということは、病魔は完全に克服したことになる。
すると、あとは、私自身の使命の問題だ。

私は、念願の七十五万世帯を達成し、大講堂も寄進申し上げた。
いま、一人の人間として果(は)たすべき使命をことごとく果たし終えた、と言える。

≪ナレーション1≫ 戸田は満ち足りた思いで、枕の上から窓外に広がる春の大空を仰いだ。
空を眺めながら、戸田は大宇宙に吸い込まれていくような思いがした。
そして、生死が不二であることを、心から実感することができたのであります。

≪泉田ため≫ (秘書部長の泉田ためです。)先生、何か、お召しあがりいただけませんでしょうか。

≪戸田城聖≫ いや、いらぬ。それより、ここに座りなさい。
私が死んだらな、……

≪泉田ため≫ お亡くなりになるなんて……先生、そんなこと、おっしゃらないでください。

≪戸田城聖≫ まァ、聞きなさい。人間、誰でもいつか死ぬものだ。
私は死んだら、大聖人のところへ還(かえ)ってご挨拶する。

そこで、叱(しか)られるか褒(ほ)められるかわからんが、七日たてばまた戻ってくる。もっとも、宇宙には地球のような星がたくさんあるから、大聖人がどこかの星で広宣流布せよ、と言われれば、そこに生まれることになるだろう。

ともかく七日間は、私の遺骸(いがい)は焼かずに、そのままにしておきなさい。
みんな、私の死相をよく見ておくのだ。
ほんとうの成仏の相とはどういうものか教えておきたいのだよ。

≪ナレーション1≫ 泉田ためは、涙で赤らんだ眼を、しばたたきながら頷いた。
この言葉も、戸田城聖の遺言となったのであります。

≪ナレーション2≫ 三月も末に迫った日のことであった。
整理役員の青年が、早朝、一人の僧侶が、お小僧(こぞう)さんたちを怒鳴(どな)り散らし、大きな鈴(りん)を頭からかぶせて、鈴棒(りんぼう)で思いっきり叩(たた)くという、信じられない虐待をしている光景に出くわした。
酒を飲んでいると見え、顔は異様に赤かった。

驚いた青年は、山本伸一にその模様(もよう)を伝えたのであります。

≪山本伸一≫ また、そんなことがあったのか。

≪青年部≫ それだけじゃありません。
16日に戸田先生を車駕(しゃが)にお乗せしたことについても、あの所家頭(しょけがしら)は、「総本山では乗りものは禁止されているのに、いい気になって、なんだ。」と罵(ののし)っています。もう、黙っているわけにはいきません。

≪ナレーション2≫ 伸一は宗門の理事に事情を説明し、所家頭の反省・謝罪を求めたのであります。

≪山本伸一≫ いいですか。このたびの大講堂の落成は、日蓮正宗の七百年の歴史に輝く、晴れの壮挙(そうきょ)なのです。
そのさなかに、僧侶が毎日、朝から酒を飲んでいるようなことがあってよいのですか。
お小僧さんに対する、暴力、暴言は、私どもとしても見過ごすわけにはいきません。是非おやめください。

学会員は、登山のたびに、お小僧さんたちに菓子や果物を買い、お届けしてきたのです。
しかし、あなたはそれを「余り物」と言う。それでは、あまりにも、学会員を愚弄(ぐろう)しているではありませんか。

また、あなたは日頃から戸田先生や学会の青年部員に反感をいだき悪口を言っていると聞きましたが、そういうことも、おやめいただきたいのです。もし、ご意見や批判があるのならばお伺いしますので、私に言ってください……

≪ナレーション2≫ 伸一は忍耐強く、噛(か)んで含めるように所化頭の非をただした。真心をつくしての説得であった。

やがて「すいません……」という声が、かすかに聞こえたのであります。

≪ナレーション1≫ 三月二十九日の朝、山本伸一は、戸田城聖に登山会の進行状況を報告したのであります。

≪山本伸一≫ 先生、ご容体はいかがでしょうか

≪戸田城聖≫ ……大丈夫だ。
どうだ……総登山の様子は……

≪山本伸一≫ はい、すべて順調に進んでおります。
総登山もあと二日となりましたが、何も事故はございません。ご安心なさってください。

≪戸田城聖≫ そうか……、何も問題はないか。青年たちは、皆、元気か……

≪山本伸一≫ はい、皆、元気でがんばっております。問題といえば、あまりに非道な僧侶がおりまして、私どもで反省を促(うなが)す意味から抗議をいたしました。

≪ナレーション1≫戸田は軽く眼を閉じて伸一の報告をきていたが、聞き終わると、さも残念そうな表情で語りはじめた。

≪戸田城聖≫ 情けないことだな……。これは、小さい事のようだが、……宗門の腐敗、堕落というじつに大きな問題をはらんでいるのだ。

なぜ、堕落が始まり、腐敗していくのか……。それは広宣流布という至上の目的に生きることを忘れているからなのだ。この一点が狂えば、すべてが狂ってしまう。
残念なことだが……広宣流布を口にしながらも、多くの僧侶が考えていることは、保身であり、私利私欲をいかに満たすかだ。

……学会員のことも、供養を運んでくる奴隷ぐらいにしか思わず、威張り散らす者もいるのだ……。

 戦時中も、宗門は、保身のために法を曲げ、大聖人の御遺命(ごゆいめい)を破り、軍部政府に迎合した。
……そして、牧口先生と私が逮捕されるや、かかわりを恐れて、学会を登山停止したのだ。

……戦時中、大聖人の仏法は、外敵によってではなく、臆病で、姑息(こそく)な、僧侶の保身によって滅ぼされようとしたのだ。

……そのなかで、厳然(げんぜん)と、大聖人の仏法の命脈(めいみゃく)を保ったのが、牧口先生であり、創価学会なのだ。……だから、大聖人の御精神は、ほんとうの、信仰は、学会にしかない。

もし、学会から離れるならば……大聖人の正義(しょうぎ)を踏みにじった、謗法の寺でしかなくなってしまう。

しかも……学会は、宗門が財政的基盤を失い、壊滅(かいめつ)の危機に瀕(ひん)しているのを、信心の赤誠(せきせい)をもって、お助けしてきた。

心ある僧侶は、それを感謝している。
しかし……なかには、学会の大発展に嫉妬(しっと)し、私に対して、反感をいだいている者もいる。

……私が、信心のあり方を厳しく言うものだから、眼のうえのタンコブのように思っているのだ。
でも、……私が生きているうちは、正面きって、とやかくいう者はおるまい。

だが、私がいなくなれば……あとは、何をするか、わかったものではないぞ。

≪ナレーション1≫ 戸田は肩で大きく息をしながら話し続けた。その言葉は、息苦しさのためか、しばしば途絶えたが、ただならぬ気迫にあふれていたのであります。

≪戸田城聖≫ 衣(ころも)の権威で、学会を奴隷のように意のままに操り、支配しようとする法主も、出てくるかもしれぬ。

……ことに、宗門の経済的な基盤が整い、金を持つようになれば、学会を切り捨てようとするにちがいない……。

戦時中と同じように、宗門は、正法を滅亡させる元凶となり、天魔の住処(すみか)にならないとも、限らないのだ……。

しかし……、日蓮大聖人の正法を滅ぼすようなことがあっては、断じてならない。

≪ナレーション1≫ そして、戸田は、最後の力を振(ふ)り絞(しぼ)るように叫んだのであります。

≪戸田城聖≫ そのために、宗門に巣くう邪悪とは、断固、戦え。

いいか、伸一。一歩も退いてはならんぞ。
追撃の手をゆるめるな!

≪ナレーション1≫ それは、炎のような言葉であった。瞬間、戸田の眼が燃え輝いた。これが、彼の最後の指導であり、愛弟子への遺言となったのであります。

≪ナレーション2≫ このお話が、戸田先生の逝去の4月2日の直前の出来事でありましたことは、皆様ご存知のとおりであります。

 本日は、小説人間革命第12巻「寂光」の章より、「戸田先生の最後の指導」と題しまして、黎明地区の、オールスターキャストでお送りいたしました。

4.2 そして 5.3と、創価のリズムを刻みながら、すべてに勝利していこうでは、ありませんか。

以上で寸劇人間革命のコーナーを終わります。


最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

この寸劇人間革命の分量は、おおよそ20文字×230行です。

印刷用に、空白行の少ないテキストデータを準備しました。

さらに、分量がおおよそ20文字×190行のコンパクトタイプも準備しました。


1、メキシコのお話。2、遺言のお話。3、所化頭のお話。4、最後の指導のお話。
4つのお話が続くために、お話の区切りをわかりやすくするために、ナレーションを2人でやる寸劇の構成にしてみました。


190行のコンパクトタイプの印刷イメージ(A4、2枚に印刷)
img_Saigonosidou_190gyouBan.jpg
20文字×230行の寸劇人間革命のデータ。

≪ナレーション1≫ 本日の寸劇人間革命は、「戸田先生の最後の指導」と題しましてお送りいたします。
時は、昭和33年・西暦1958年3月は下旬のお話。そうです。「広宣流布記念の日」3月16日の数日後のお話であります。
≪ナレーション2≫ ある朝のことである。
伸一が戸田城聖の寝ている理境坊(りきょうぼう)の二階へ行くと、戸田は床のなかでにこやかな表情を浮かべて話かけてきた。
≪戸田城聖≫ 伸一、昨日は、メキシコへ行った夢を見たよ。
待っていた、みんな待っていたよ。日蓮大聖人の仏法を求めてな。行きたいな、世界へ。広宣流布の旅に……。
≪山本伸一≫ 先生……
≪戸田城聖≫ 伸一、世界が相手だ。君の本当の舞台は世界だよ。
世界は広いぞ。人種も、民族も、異なる。自由主義の国も、社会主義の国もある。国によって宗教もさまざまだ。
そうした国々に、どうやって妙法を広めていくか、いまからよく考えておくことだ。
人類の幸福と平和の実現こそ仏法の本義なのだからな。
≪ナレーション2≫ 戸田はまじまじと伸一の顔を見た。そして、布団のなかから手を出した。伸一は、無言でその手を握った。
≪戸田城聖≫ 伸一、生きろ。うんと生きるんだぞ。そして、世界に征(ゆ)くんだ。
≪ナレーション2≫ 伸一は戸田の手を握りしめ、何度も頷(うなづ)きながら唇をかみ締(し)めた。彼は師匠の温かい情愛、自己の使命の重大さが痛感されてならなかったのであります。
≪ナレーション1≫ 3月24日、戸田の体の衰弱を心配して、東京から医師を呼んだのであります。
≪木田医師≫ ご病気はすべて治っております。ただ、お体が著しく衰弱しています。
重湯でも、スープでも結構ですから、しっかりお召(め)しあがりになってください。
≪戸田城聖≫ ――どこも悪くないということは、病魔は完全に克服したことになる。
すると、あとは、私自身の使命の問題だ。
私は、念願の七十五万世帯を達成し、大講堂も寄進申し上げた。
いま、一人の人間として果(は)たすべき使命をことごとく果たし終えた、と言える。
≪ナレーション1≫ 戸田は満ち足りた思いで、枕の上から窓外に広がる春の大空を仰いだ。
空を眺めながら、戸田は大宇宙に吸い込まれていくような思いがした。
そして、生死が不二であることを、心から実感することができたのであります。
≪泉田ため≫ (秘書部長の泉田ためです。)先生、何か、お召しあがりいただけませんでしょうか。
≪戸田城聖≫ いや、いらぬ。それより、ここに座りなさい。
私が死んだらな、……
≪泉田ため≫ お亡くなりになるなんて……先生、そんなこと、おっしゃらないでください。
≪戸田城聖≫ まァ、聞きなさい。人間、誰でもいつか死ぬものだ。
私は死んだら、大聖人のところへ還(かえ)ってご挨拶する。
そこで、叱(しか)られるか褒(ほ)められるかわからんが、七日たてばまた戻ってくる。もっとも、宇宙には地球のような星がたくさんあるから、大聖人がどこかの星で広宣流布せよ、と言われれば、そこに生まれることになるだろう。
ともかく七日間は、私の遺骸(いがい)は焼かずに、そのままにしておきなさい。
みんな、私の死相をよく見ておくのだ。
ほんとうの成仏の相とはどういうものか教えておきたいのだよ。
≪ナレーション1≫ 泉田ためは、涙で赤らんだ眼を、しばたたきながら頷いた。この言葉も、戸田城聖の遺言となったのであります。
≪ナレーション2≫ 三月も末に迫った日のことであった。整理役員の青年が、早朝、一人の僧侶が、お小僧(こぞう)さんたちを怒鳴(どな)り散らし、大きな鈴(りん)を頭からかぶせて、鈴棒(りんぼう)で思いっきり叩(たた)くという、信じられない虐待をしている光景に出くわした。酒を飲んでいると見え、顔は異様に赤かった。
驚いた青年は、山本伸一にその模様(もよう)を伝えたのであります。
≪山本伸一≫ また、そんなことがあったのか。
≪青年部≫ それだけじゃありません。
16日に戸田先生を車駕(しゃが)にお乗せしたことについても、あの所家頭(しょけがしら)は、「総本山では乗りものは禁止されているのに、いい気になって、なんだ。」と罵(ののし)っています。もう、黙っているわけにはいきません。
≪ナレーション2≫ 伸一は宗門の理事に事情を説明し、所家頭の反省・謝罪を求めたのであります。
≪山本伸一≫ いいですか。このたびの大講堂の落成は、日蓮正宗の七百年の歴史に輝く、晴れの壮挙(そうきょ)なのです。
そのさなかに、僧侶が毎日、朝から酒を飲んでいるようなことがあってよいのですか。
お小僧さんに対する、暴力、暴言は、私どもとしても見過ごすわけにはいきません。是非おやめください。
学会員は、登山のたびに、お小僧さんたちに菓子や果物を買い、お届けしてきたのです。
しかし、あなたはそれを「余り物」と言う。それでは、あまりにも、学会員を愚弄(ぐろう)しているではありませんか。
また、あなたは日頃から戸田先生や学会の青年部員に反感をいだき悪口を言っていると聞きましたが、そういうことも、おやめいただきたいのです。もし、ご意見や批判があるのならばお伺いしますので、私に言ってください……
≪ナレーション2≫ 伸一は忍耐強く、噛(か)んで含めるように所化頭の非をただした。真心をつくしての説得であった。
やがて「すいません……」という声が、かすかに聞こえたのであります。
≪ナレーション1≫ 三月二十九日の朝、山本伸一は、戸田城聖に登山会の進行状況を報告したのであります。
≪山本伸一≫ 先生、ご容体はいかがでしょうか
≪戸田城聖≫ ……大丈夫だ。
どうだ……総登山の様子は……
≪山本伸一≫ はい、すべて順調に進んでおります。
総登山もあと二日となりましたが、何も事故はございません。ご安心なさってください。
≪戸田城聖≫ そうか……、何も問題はないか。青年たちは、皆、元気か……
≪山本伸一≫ はい、皆、元気でがんばっております。問題といえば、あまりに非道な僧侶がおりまして、私どもで反省を促(うなが)す意味から抗議をいたしました。
≪ナレーション1≫戸田は軽く眼を閉じて伸一の報告をきていたが、聞き終わると、さも残念そうな表情で語りはじめた。
≪戸田城聖≫ 情けないことだな……。これは、小さい事のようだが、……宗門の腐敗、堕落というじつに大きな問題をはらんでいるのだ。
なぜ、堕落が始まり、腐敗していくのか……。それは広宣流布という至上の目的に生きることを忘れているからなのだ。この一点が狂えば、すべてが狂ってしまう。
残念なことだが……広宣流布を口にしながらも、多くの僧侶が考えていることは、保身であり、私利私欲をいかに満たすかだ。
……学会員のことも、供養を運んでくる奴隷ぐらいにしか思わず、威張り散らす者もいるのだ……。
 戦時中も、宗門は、保身のために法を曲げ、大聖人の御遺命(ごゆいめい)を破り、軍部政府に迎合した。
……そして、牧口先生と私が逮捕されるや、かかわりを恐れて、学会を登山停止したのだ。
……戦時中、大聖人の仏法は、外敵によってではなく、臆病で、姑息(こそく)な、僧侶の保身によって滅ぼされようとしたのだ。
……そのなかで、厳然(げんぜん)と、大聖人の仏法の命脈(めいみゃく)を保ったのが、牧口先生であり、創価学会なのだ。……だから、大聖人の御精神は、ほんとうの、信仰は、学会にしかない。
もし、学会から離れるならば……大聖人の正義(しょうぎ)を踏みにじった、謗法の寺でしかなくなってしまう。
しかも……学会は、宗門が財政的基盤を失い、壊滅(かいめつ)の危機に瀕(ひん)しているのを、信心の赤誠(せきせい)をもって、お助けしてきた。
心ある僧侶は、それを感謝している。しかし……なかには、学会の大発展に嫉妬(しっと)し、私に対して、反感をいだいている者もいる。
……私が、信心のあり方を厳しく言うものだから、眼のうえのタンコブのように思っているのだ。
でも、……私が生きているうちは、正面きって、とやかくいう者はおるまい。だが、私がいなくなれば……あとは、何をするか、わかったものではないぞ。
≪ナレーション1≫ 戸田は肩で大きく息をしながら話し続けた。その言葉は、息苦しさのためか、しばしば途絶えたが、ただならぬ気迫にあふれていたのであります。
≪戸田城聖≫ 衣(ころも)の権威で、学会を奴隷のように意のままに操り、支配しようとする法主も、出てくるかもしれぬ。
……ことに、宗門の経済的な基盤が整い、金を持つようになれば、学会を切り捨てようとするにちがいない……。
戦時中と同じように、宗門は、正法を滅亡させる元凶となり、天魔の住処(すみか)にならないとも、限らないのだ……。
しかし……、日蓮大聖人の正法を滅ぼすようなことがあっては、断じてならない。
≪ナレーション1≫ そして、戸田は、最後の力を振(ふ)り絞(しぼ)るように叫んだのであります。
≪戸田城聖≫ そのために、宗門に巣くう邪悪とは、断固、戦え。
いいか、伸一。一歩も退いてはならんぞ。
追撃の手をゆるめるな!
≪ナレーション1≫ それは、炎のような言葉であった。瞬間、戸田の眼が燃え輝いた。これが、彼の最後の指導であり、愛弟子への遺言となったのであります。
≪ナレーション2≫ このお話が、戸田先生の逝去の4月2日の直前の出来事でありましたことは、皆様ご存知のとおりであります。
 本日は、小説人間革命第12巻「寂光」の章より、「戸田先生の最後の指導」と題しまして、黎明地区の、オールスターキャストでお送りいたしました。
4.2 そして 5.3と、創価のリズムを刻みながら、すべてに勝利していこうでは、ありませんか。
以上で寸劇人間革命のコーナーを終わります。


20文字×230行の寸劇のデータここまで。




20文字×190行のコンパクトタイプの寸劇のデータここから。
木田医師の登場ありません。



≪ナレーション1≫ 本日の、寸劇人間革命は、「戸田先生の最後の指導」と題しましてお送りいたします。
時は、昭和33年・西暦1958年3月は下旬のお話。そうです。「広宣流布記念の日」3月16日の数日後のお話であります。

≪ナレーション2≫ ある朝のことである。
伸一が戸田城聖の寝ている理境坊(りきょうぼう)の二階へ行くと、戸田は床のなかで、にこやかな表情を浮かべて話かけてきた。
≪戸田城聖≫ 伸一、昨日は、メキシコへ行った夢を見たよ。
待っていた、みんな待っていたよ。日蓮大聖人の仏法を求めてな。行きたいな、世界へ。広宣流布の旅に……。
≪山本伸一≫ 先生……
≪戸田城聖≫ 伸一、世界が相手だ。君の本当の舞台は世界だよ。
世界は広いぞ。人種も、民族も、異なる。自由主義の国も、社会主義の国もある。国によって宗教もさまざまだ。
≪ナレーション2≫ 戸田はまじまじと伸一の顔を見た。そして、布団のなかから手を出した。伸一は、無言でその手を握った。
≪戸田城聖≫ 伸一、生きろ。うんと生きるんだぞ。そして、世界に征(ゆ)くんだ。
≪ナレーション2≫ 伸一は戸田の手を握りしめ、何度も頷きながら唇をかみ締めた。彼は師匠の温かい情愛、自己の使命の重大さが痛感されてならなかったのであります。

≪ナレーション1≫ 戸田の衰弱は激しく、もう自分の力のみでは立って歩くこともできなかった。だが、布団に横たわりながらも、彼は毅然としていたのであります。
≪泉田ため≫ (秘書部長の泉田ためです。)先生、何か、お召しあがりいただけませんでしょうか。
≪戸田城聖≫ いや、いらぬ。それより、ここに座りなさい。
私が死んだらな、……
≪泉田ため≫ お亡くなりになるなんて……先生、そんなこと、おっしゃらないでください。
≪戸田城聖≫ まァ、聞きなさい。人間、誰でもいつか死ぬものだ。
私は死んだら、大聖人のところへ還(かえ)ってご挨拶する。
そこで、叱(しか)られるか、褒(ほ)められるかわからんが、七日たてばまた戻ってくる。もっとも、宇宙には地球のような星がたくさんあるから、大聖人がどこかの星で広宣流布せよ、と言われれば、そこに生まれることになるだろう。
ともかく七日間は、私の遺骸(いがい)は焼かずに、そのままにしておきなさい。
みんな、私の死相をよく見ておくのだ。
ほんとうの成仏の相とはどういうものか教えておきたいのだよ。
≪ナレーション1≫ 泉田ためは、涙で赤らんだ眼を、しばたたきながら頷(うなづ)いた。この言葉も、戸田城聖の遺言となったのであります。

≪ナレーション2≫ 三月も末に迫った日のことであった。整理役員の青年が、早朝、一人の僧侶が、お小僧(こぞう)さんたちを怒鳴(どな)り散らし、大きな鈴(りん)を頭からかぶせて、鈴棒(りんぼう)で思いっきり叩(たた)くという、信じられない虐待をしている光景に出くわした。酒を飲んでいると見え、顔は異様に赤かった。
驚いた青年は、山本伸一にその模様(もよう)を伝えたのであります。
≪山本伸一≫ また、そんなことがあったのか。
≪青年部≫ それだけじゃありません。
16日に戸田先生を車駕(しゃが)にお乗せしたことについても、あの所家頭(しょけがしら)は「総本山では乗りものは禁止されているのに、いい気になって、なんだ。」と罵(ののし)っています。もう、黙っているわけにはいきません。
≪ナレーション2≫ 伸一は宗門の理事に事情を説明し、所家頭の謝罪・反省を求めたのであります。
≪山本伸一≫ いいですか。このたびの大講堂の落成は、日蓮正宗の七百年の歴史に輝く、晴れの壮挙(そうきょ)なのです。
そのさなかに、僧侶が毎日、朝から酒を飲んでいるようなことがあってよいのですか。
お小僧さんに対する、暴力、暴言は、私どもとしても見過ごすわけにはいきません。是非おやめください。
また、あなたは日頃から戸田先生や学会の青年部員に反感をいだき悪口を言っていると聞きましたが、そういうことも、おやめいただきたいのです。もし、ご意見や批判があるのならばお伺いしますので、私に言ってください……
≪ナレーション2≫ 伸一は忍耐強く、噛(か)んで含めるように所化頭の非をただした。真心をつくしての説得であった。
やがて「すいません……」という声が、かすかに聞こえたのであります。

≪ナレーション1≫ 三月二十九日の朝、山本伸一は、登山会の進行状況を戸田城聖に報告したのであります。
≪山本伸一≫ すべて順調に進んでおります。
ただ、あまりに非道な僧侶がおりまして、私どもで反省を促(うなが)す意味から抗議をいたしました。
≪ナレーション1≫戸田は軽く眼を閉じて伸一の報告をきていたが、聞き終わると、さも残念そうな表情で語りはじめた。
≪戸田城聖≫ 情けないことだな……。これは、小さい事のようだが、……宗門の腐敗、堕落というじつに大きな問題をはらんでいるのだ。
なぜ、堕落が始まり、腐敗していくのか……。それは広宣流布という至上の目的に生きることを忘れているからなのだ。この一点が狂えば、すべてが狂ってしまう。
残念なことだが……広宣流布を口にしながらも、多くの僧侶が考えていることは、保身であり、私利私欲をいかに満たすかだ。
……学会員のことも、供養を運んでくる奴隷ぐらいにしか思わず、威張り散らす者もいるのだ……。
戦時中も、宗門は、保身のために法を曲げ、大聖人の御遺命(ごゆいめい)を破り、軍部政府に迎合した。
……そして、牧口先生と私が逮捕されるや、かかわりを恐れて、学会を登山停止したのだ。
……そのなかで、厳然(げんぜん)と、大聖人の仏法の命脈(めいみゃく)を保ったのが、牧口先生であり、創価学会なのだ。
……だから、大聖人の御精神は、ほんとうの、信仰は、学会にしかない。
もし、学会から離れるならば……大聖人の正義(しょうぎ)を踏みにじった、謗法の寺でしかなくなってしまう。
……学会は、宗門が、壊滅(かいめつ)の危機に瀕(ひん)しているのを、信心の赤誠(せきせい)をもって、お助けしてきた。
……しかし私が、信心のあり方を厳しく言うものだから、眼のうえのタンコブのように思っている者もいる。
でも、……私が生きているうちは、正面きって、とやかくいう者はおるまい。
だが、私がいなくなれば……あとは、何をするか、わかったものではないぞ。

≪ナレーション1≫ 戸田は肩で大きく息をしながら話し続けた。その言葉は、息苦しさのためか、しばしば途絶えたが、ただならぬ気迫にあふれていたのであります。
≪戸田城聖≫ 衣(ころも)の権威で、学会を奴隷のように意のままに操り、支配しようとする法主も、出てくるかもしれぬ。
戦時中と同じように、宗門は、正法を滅亡させる元凶となり、天魔の住処(すみか)にならないとも、限らないのだ……。
しかし……、日蓮大聖人の正法を滅ぼすようなことがあっては、断じてならない。
≪ナレーション1≫ そして、戸田は、最後の力を振(ふ)り絞(しぼ)るように叫んだのであります。

≪戸田城聖≫ そのために、宗門に巣くう邪悪とは、断固、戦え。
いいか、伸一。一歩も退いてはならんぞ。
追撃の手をゆるめるな!
≪ナレーション1≫ それは、炎のような言葉であった。瞬間、戸田の眼が燃え輝いた。
これが、彼の最後の指導であり、愛弟子への遺言となったのであります。

≪ナレーション2≫ このお話が、戸田先生の逝去の4月2日の直前の出来事でありましたことは、皆様ご存知のとおりであります。
 本日は、小説人間革命第12巻「寂光」の章より、「戸田先生の最後の指導」と題しまして、黎明地区の、オールスターキャストでお送りいたしました。
4.2 そして 5.3と、創価のリズムを刻みながら、すべてに勝利していこうでは、ありませんか。
以上で寸劇人間革命のコーナーを終わります。


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テーマ: 二次創作:小説 | ジャンル: 小説・文学

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